映画「記者たち 衝撃と畏怖の真実」<感想・解説・ネタバレあり>

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記者たち 衝撃と畏怖の真実 雑談

映画「記者たち 衝撃と畏怖の真実」を鑑賞しました。気になった点と感想をまとめます。ネタバレを含むので鑑賞後にご覧下さい。

映画情報

原題:Shock and Awe
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2019年3月29日
監督:ロブ・ライナー
脚本:ジョーイ・ハートストーン
主演:ウディ・ハレルソン

あらすじ

2002年、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「大量破壊兵器保持」を理由に、イラク侵攻に踏み切ろうとしていた。新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局長ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)は部下のジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)、ウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)、そして元従軍記者でジャーナリストのジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)に取材を指示、しかし破壊兵器の証拠は見つからず、やがて政府の捏造、情報操作である事を突き止めた。真実を伝えるために批判記事を世に送り出していく4人だが、NYタイムズ、ワシントン・ポストなどの大手新聞社は政府の方針を追認、ナイト・リッダーはかつてないほど愛国心が高まった世間の潮流の中で孤立していく。それでも記者たちは大儀なき戦争を止めようと、米兵、イラク市民、家族や恋人の命を危険にさらす政府の嘘を暴こうと奮闘する…
引用元:http://reporters-movie.jp/

物語の背景(9.11とイラク戦争)

アメリカ同時多発テロ事件(通称9.11)は2001年9月11日にイスラム過激派テロ組織アルカイダがアメリカ合衆国で同時多発的に実行した4つのテロ攻撃の総称です。この事件から「テロ」という言葉が広く認知されるようにりました。アメリカ合衆国政府は捜査の結果、このテロ攻撃の犯人が「アルカーイダ」のオサマ・ビンラディンによって実行されたと断定しました。そしてアフガニスタンで、アメリカ合衆国が主導する有志連合諸国および北部同盟と「アルカーイダ」の引き渡しに応じなかった「ターリバーン政権」とで武力衝突がはじまります。(アフガニスタン紛争)2001年10月2日にこの紛争は始まり、10年近くが経った2011年5月2日に当時のアメリカ合衆国大統領バラク・オバマが「ビン=ラーディンとされる遺体を回収した」の声明を発表しています。
そして、イラクに対して何故攻撃をしたかについては、当時のアメリカ政府がイラク政府は「アルカーイダ」とつながっており、「大量破壊兵器」があると考え、2002年にはブッシュ大統領が「イラン、北朝鮮、そしてイラクは悪の枢軸、テロ支援国家である」という演説をしています。2003年3月17日にブッシュ大統領がフセイン大統領に即時国外退去を勧告しますが、フセイン大統領はこれに応じませんでした。他国からの反対もある中、それを押し切った形で3月20日に米英軍による空爆(イラクの自由作戦)が開始されました。4月10日にはバグダードのサッダーム・フセインの銅像が引き倒される、5月1日にブッシュ大統領が「大規模戦闘終結宣言」を行い、12月13日にフセイン大統領は拘束されました(2006年12月30日に人道に対する罪でイラク側にて処刑)。その後復興支援が開始されるものの戦闘自体は続き、2011年12月14日にオバマ大統領が、イラク戦争の終結を正式に宣言して幕を閉じます。そして「大量破壊兵器」は1つも出てきませんでした。

衝撃と畏怖の意味

映画の原題「Shock and Awe」(衝撃と畏怖)は米軍が命名したイラク戦争の作戦名です。「畏怖」とは「恐れおののくこと」。イラク戦争でバグダードが陥落するまでは50日程度と短い期間であったことからも、当時の米軍がイラクに対して、短い期間に集中して大規模な攻撃を繰り返し、対抗心を圧し折ろうとする強気な意味をこの作戦名に込めていたのではないかと思われます。

ナイト・リッダー社とは

「ナイトリッダー社」は1974年に創業された本社がカリフォルニア州サンホゼにある新聞社で、2006年3月13日にマクラッチー社に買収されるまで通信社として32紙を傘下にしており、米国で二番目に大きい新聞社でした。9.11以降、イラクの脅威をあおる政府発表に同調的な報道をした大手のニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストに対して、一貫して懐疑的に報道し続けたのがこの「ナイト・リッダー社」でした。劇中登場するワシントン支局のジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)とウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)や支局長ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー *スタンド・バイ・ミーの監督)、ジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)は全て実在する人物達で、映画の撮影現場にも何度も足を運び、制作に協力しています。映画の最後にも実写で登場していましたね。劇中ロブ・ライナーのセリフ「我々は我が子を戦争にやるものたちの味方だ」は本当時ジョン・ウォルコットが本当に発言したものだとのこと。孤立しながらも真実を突き止めるため、孤軍奮闘状態であったナイト・リッダー社は本当に存在していたのです。

映画「バイス」との関係

日本で同時期に公開されている「バイス」と両方見ると深掘りが出来て面白いです。「バイス」は政府側の視点で、この「記者たち 衝撃と畏怖の真実」は記者の視点で、当時の状況を炙り出してくれています。2003年2月5日の国際連合安全保障理事会で行われたパウエル国務長官の発言シーンは両方の映画でも出てきます。当時どうゆう意図でこの演説が行われたか、そして記者達にとってのイラク戦争反対派の最後の砦であったパウエルの発言。ちなみにパウエル自身は後にこの報告を「私の生涯の汚点であり、報告内容はひどいものだった」と話ています。

バイスについても書きました。
映画「バイス」<感想・解説・ネタバレあり>

感想

事実を基にしたお話ということで、イラク戦争が止められなかったことは最初から分かっていましたが、当時周りに理解されずとも真実を突き止めようとしたナイト・リッダー社の面々が実写で現れた時、「この話、事実なんだような・・・」と改めて衝撃と畏怖と感動を覚えました。結果的に幸せな結末は迎えられませんでしたが、この映画から教訓を得ることは出来ると思います。それは「人は見たい事実を見ようとしてしまう」という事だと思います。ロブ・ライナー監督はインタビューで、「国外(ドバイ・スイス・日本)での評価の方がアメリカより良く、国外からの方が何が見えているかはっきり見えているのではないか?」と話をされています。なぜそう思うのか?、それはアメリカ人がこの9.11から起きた事実を見る前提に「大きな感情」が存在するからです。感情こそ「見たい事実」を作ってしまう原因ではないでしょうか。少しは自分も疑う余地を残しておき、ニュースから垂れ流される事実を単に真実と捉える前に、自分の頭で考えてから消化しないといけないということなのかもしれません。そうしないと「意図して作られた嘘」を事実と思い込んでしまいます。9.11以降に起きたことがまた繰り返されないように覚えておきたいですね。

*同時期の実話を基にした作品として「スポットライト 世紀のスクープ」もオススメです。

コメント

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